100万円が432万円になる? 利益が利益を生む「複利」。まずは30年後の答えから見てみましょう。 30年後、432万円。 もし100万円を、年利5%で30年間、利益も含めて運用し続けたら、いくらになるでしょう。答えは約432万円。元本の4倍を超えます。 増えた332万円は、時間が生んだ。 元のお金は100万円なのに、増えた金額は約332万円。途中で追加のお金を入れなくても、長い時間が増加の速度を変えていきます。 これは「計算上の仮定」です。 ただし、年利5%が毎年確実に続くという意味ではありません。今回は複利の仕組みを見える形にするためのシミュレーションです。将来の保証ではない、という前提でこの先を読み進めてください。 半数以上が迷う複利クイズ あなたは即答できますか?シンプルだけど奥が深い、複利の基本問題。 110万円より多い?少ない? 100万円を年利2%で5年間、税金を考えず複利で預けると、残高は110万円より多いでしょうか。少ないでしょうか。 A. 110万円より多い B. 110万円より少ない 正解は「多い」。約110万4千円。 正解は、110万円より多い、です。計算すると約110万4千円。最後の約4千円が、利息にも利息がついたことで生まれました。 正解できた人は、44%。 日本銀行が2020年の講演で紹介した調査では、この複利問題に正解した日本の人は44%でした。半数以上が迷った計算です。 覚えるのは「循環」だけ。 複利は難しい公式を暗記する話ではありません。増えた分を使わず、次の増加を生む元手に戻す。 元本 → 利益 → 再投資 → 大きくなった元本 → さらに大きな利益… この循環を理解すれば十分です。 利益が利益を生む仕組み 1年目は同じ。差がつくのは2年目から。複利のエンジンを分解します。 はじまりは、元本100万円。 最初に預けたり投資したりするお金を、元本と呼びます。100万円から始めるなら、この100万円が最初に働く元本です。 1年目、5万円の利益。 1年目に5%増えると、100万円は105万円になります。利益は5万円。ここまでは単利でも複利でも結果は同じです。 2年目、105万円「全体」が働く。 違いが出るのは2年目です。複利では、元の100万円ではなく、1年目の利益を含む105万円全体に5%がかかります。 別々だった「100万円」と「5万円」が、ひとつの新しい元本になるのです。 2500円の「利益の利益」。 そのため2年後は110万円ではなく、110万2500円です。余分な2500円が、1年目の利益から生まれた利益です。 元本 ×(1 + 利率)^ 年数 式では、元本かける、1たす利率、の年数乗。 大切なのは式の暗記より、増えた利益が次の元本として働くこと。それだけで複利は理解できています。 単利と複利、30年の差 同じ100万円、同じ5%、同じ30年。それでも結果は182万円違う。 同じ条件で、2つを比べる。 100万円を年利5%で30年間運用したとき、単利と複利を比べます。税金と手数料は考えない、同じ条件での比較です。 単利: 利息は元本100万円だけに付く 複利: 利息は増えた資産全体に付く 単利は、まっすぐ250万円へ。 単利は、元本100万円だけに利息がつくため、毎年5万円ずつ同じ幅で増えます。30年後は250万円です。 複利は、加速しながら伸びる。 複利は、増える金額そのものが少しずつ大きくなります。10年後は約163万円、20年後は約265万円です。 差は、約182万円。 30年後、複利は約432万円。単利との差は約182万円です。最初はわずかな差でも、時間がたつほど広がります。 主役は、利益を働かせる「時間」。 グラフが直線ではなく曲線になる理由は、前年までの利益も働くからです。複利の主役は、利益を働かせる時間です。 複利は後半ほど伸びる 最初の10年は地味。最後の10年が主役。複利のタイムラインを見る。 5年後は、まだ128万円。 複利は、最初から派手に増えるわけではありません。年利5%でも、5年後は約128万円です。 10年たっても、2倍には届かない。 10年後は約163万円。まだ元本の2倍には届きません。短い期間だけを見ると、複利は地味に見えます。 最後の10年で、167万円増える。 ところが20年後には約265万円、30年後には約432万円。最後の10年間だけで約167万円増えます。 1年分の増加額も、育っていく。 同じ5%でも、増える土台が大きくなるほど、1年分の増加額も大きくなります。 遅れて失うのは「最後の10年」。 開始が10年遅れる影響は、最初の10年を失うだけではありません。資産が大きく伸びる、最後の10年も失います。 複利のグラフで一番おいしい区間は、いつだって一番最後にあるのです。 1%・3%・5%で何が変わる? たった数ポイントの利率差が、30年でどれほどの違いを生むのか。 同じ30年、違う利率。 100万円を30年間、年利1%、3%、5%で複利運用する仮定を、同じグラフで比べます。上の線が5%、下の線が3%。1%はさらに緩やかです。 年利1%なら、135万円。 年利1%では、30年後に約135万円です。ゆっくりですが、運用しない100万円より約35万円多い計算です。 1%と3%の差は、108万円。 年利3%では、30年後に約243万円。年利1%との差は、約108万円まで広がります。 「2ポイント」が、189万円の差に。 年利5%では約432万円。3%より2ポイント高いだけですが、最終金額は約189万円多くなります。 高い利率は、高いリスクとセット。 ただし、高い利率には通常、より大きな値動きや損失の可能性が伴います。数字の高さだけで選んではいけません。 リターンの天秤の反対側には、いつもリスクの重りが乗っています。 毎月1万円でも複利は働く まとまったお金がなくても大丈夫。積立 × 複利の現実的なシナリオ。 100万円がなくても、始められる。 複利は、まとまった100万円がないと使えない仕組みではありません。毎月少しずつ積み立てる場合にも働きます。 毎月1万円。ランチ数回分の金額から、時間のエンジンは回り始めます。 30年の積立元本は、360万円。 毎月1万円を30年間積み立てると、自分で入れた元本の合計は360万円です。 30年後、約583万円に。 年利3%、月ごとの複利計算を仮定すると、30年後は約583万円。運用による増加分は約223万円です。 10年の早さが、340万円を変える。 20歳から60歳まで40年間なら約926万円。30歳から30年間なら約583万円。10年の差が大きく表れます。 金額より、時間と継続。 毎月の金額を無理に増やす前に、続けられる額で早く始める。時間を味方にすることが、複利の基本です。 現実の運用は一直線ではない きれいな曲線は教科書の中だけ。現実の値動きと向き合うための章。 現実の線は、上下に揺れる。 ここまでのグラフは、毎年同じ割合で増える理想化した計算です。実際の投資価格は、上がる年も下がる年もあります。 「使う直前」に下がることもある。 平均利回りがプラスでも、途中で大きく下がることがあります。必要な時期に損失が出る可能性も考える必要があります。 手数料1%が、108万円を削る。 手数料は、毎年の増加率を少しずつ削ります。100万円を30年、5%と4%で比べると、差は約108万円です。 表示金額 ≠ 使えるお金。 税金、手数料、物価上昇を考えると、表示された将来金額と、実際に使えるお金の価値は異なります。 大きく見える数字から、3つの引き算があることを忘れないでください。 複利はマイナスにも働く 増やす力は、減らす力にもなる。複利のもう一つの顔。 借金にも、複利は働く。 複利は利益だけに働くものではありません。借金の利息や未払いが積み上がる場面では、負担を増やす方向に働きます。 借入残高 → 利息 → 残高に加算 → さらに大きな利息。循環するたびに、雪だるまは大きくなります。 下落は速く、回復は遅い。 複利だから必ず増えるわけではありません。元になる収益がマイナスなら資産は減り、その後の回復は難しくなります。 50%下落の回復には、100%の上昇。 50%下落した資産が元に戻るには、残った金額から100%増える必要があります。下落率と回復率は同じではありません。 複利を使う前に覚える3点 ここまでの旅のまとめ。持ち帰るのは、たった3つ。 複利は「利益を元本に戻す」仕組み。 一つ目。複利とは、利益を元本に戻し、その利益にも次の利益がつく仕組みです。 元本 → 利益 → 再投資。この循環がすべての出発点です。 時間と利率の小さな差が、大きな差に。 二つ目。時間と利率の小さな違いが、長期では大きな差になります。 三つ目。複利そのものに利益保証はありません。リスクと引き算(税・手数料・物価)を忘れずに。